伝えるおはなし。 (4)
最後の前日に
突然に 優しく本でも読んでいるように
何かそっと話しているように
小さい声で長い時間ワンワンワンワンと伝えてくれました。
何か伝えてくれているのだけれど
わからなくて せつなくて それは長く続いたので
わたしは終わりの予感で
胸と喉がふさがるようにつまりました。
目が熱くてがまんもできませんでした。
今まで聞いた誰のどんな声より優しい声でした。
次の朝はひとくちのお水もいらないと拒みました。
りんごをすりました。
膝の上に頭をのせて
スプンを近づけると少し匂いをかぐようにしてから
少しだけ舌先をつけてくれました。
耳の後ろのくせのある柔らかい毛をしばらくなでました。
とてもきれいでかわいくて そう伝えました。
今日は仕事を休むよと伝えました。
それからすぐにのりちゃんは
息だけの声で小さくゆっくり あ あ あ あと言って
わたしは口元に耳を寄せて聞き取ろうと抱きしめましたが
手の中でとても静かにいのちが終わりました。
のりちゃんの言葉が何かはずっとわからないけれど何か伝えてくれました。